海コン運転手ってどんな仕事だろう?免許は?きつい?面白い?——そんな疑問を持っている人、きっと多いと思います。
必要な免許や仕事内容、毎日の働き方や雰囲気など、未経験の方が気になるポイントをQ&A形式で紹介します。
このページを書いているのは、まったくの未経験から海コン業界に飛び込んで、ただいま3年目に突入した私(←Kaicon.jpの中の人)です。まだまだベテランとは言えませんが、だからこそ「最初に知りたかったこと」をリアルに伝えられるかなと思います。
免許・採用・定年
Q:運転免許は何が必要ですか?
A:大型一種と牽引免許です。自動車学校によっては合宿で両方セットで取得できます。
Q:運送業界未経験でも採用してもらえますか?
A:会社によります。トラックでの運送業務未経験だとトレーラーには乗せない、採用しない、という会社もあります。そうでない会社もあります。いずれにしてもドライバー枠の空きがあるタイミングが重要です。
Q:定年はありますか?
A:会社によると思いますが、一応あります。ただ、規定年齢できっちり退職させる会社もあれば、延長雇用する会社もあり、さらにはそういった定年退職者を雇用する会社もあります。実際、70代の大先輩も活躍中です。
Q:取っておいたらいい資格は?
A:大型トラックだと、玉掛け・フォークリフト・危険物取扱などを取れば仕事の幅が広がると聞きますが、海コンの場合は使う場面がありません。
必要な素養・心構え
Q:運転免許以外に必要な素養はなんですか?
A:大型トレーラーを運転するので、人並み以上の車両感覚が必要です。乗用車の車庫入れで苦労してる程度では難しいかもしれません。あと、お客様あっての仕事ですから、勤勉であることに加えて、寝坊や遅刻をしないことなども大事です。
Q:その他に必要な心構えなどはありますか?
A:どんな仕事でも同じだと思いますが、「ほう・れん・そう」は大事です。つまり、「報告」「連絡」「相談」です。未経験でわからないことをわからないまま勝手にやって失敗すると大変なことになりますから、最初のうちは上司に「ほう・れん・そう」を徹底して確実な業務遂行をしましょう。
基礎知識(海コン・車両関連)
Q:海コンってなんですか?
A:海上コンテナ、の略です。国際物流貨物を船で運ぶための規格化された鉄の箱であり、国内では主に40フィート(約12m)と20フィート(約6m)の長さのが使われています。詳細は日新さんの解説をどうぞ。
海上コンテナ 【40フィートコンテナ】 N-avigation
Q:海コンは船で運ばれるのですか?
A:そうです。コンテナ船で運ばれます。ただし、実際には複雑な経路をたどります。たとえば、米国東海岸から出荷されたコンテナが日本に送られる場合を考えると、トレーラーでの陸送、鉄道輸送、コンテナ船での海上輸送などを組み合わせて日本に来ることになるでしょう。

Q:トレーラーってなんですか?
A:世間では「牽引するエンジン付き車両と牽引される荷台車両を連結した車両全体」をトレーラーと呼ぶのが一般的です。ただし、正式にはトレーラーとは牽引される車両を指し、これを牽引する動力付き車両をトラクターと言います。でも、業界内では牽引する方をヘッド(または頭)、コンテナを載せて牽引される方をシャーシ(または骨)と呼びます。

Q:AT車はありますか?
A:あります。乗ってる人も多いと思います。大型トラックのATは、内部機構的にはMTで、その上にAT的自動変速システムを被せた作りになっています。そのためAMT(Automated Manual Transmission)と表記してるメーカーもあります。操作感としてはオートマです。
Q:車重はどれくらいありますか?
A:組み合わせる機材によっても異なりますが、40ftコンテナの場合、貨物が26t、コンテナ自体が4t、それらを載せる台車(シャーシ)が5t、それらを引っ張るヘッドが7t、最大値として合計42tくらいになります。
Q:ナビは使いますか?
A:はい。弊社の場合はヘッドに装備されてはいませんが、個人的にトラック用ナビを使ってる人は多そうです。でも使わずにどこにでも行ってしまう猛者もいます。ただ、ナビの過信は禁物です。トレーラーの長さを考慮してくれないので、とんでもない山道に迷い込んだ人もいます。(誰?)
Q:ヘッドは廃車までにどれくらいの距離を走りますか?
A:ざっと乗用車の10倍くらい走ると思っていいかと思います。70万kmを超えてまだ現役の車両もあります。耐用年数的には車両管理の方に聞いた話だと、最近のヘッドは10年は持たないそうです。
Q:ヘッドの故障はありますか?
A:新しい車両は少ないとは思いますが、古くなってくるといろいろあります。冷却水を全部ぶちまけたり、エアタンク周りの故障で走行不能になったり、エアコンが故障したり、排気ブレーキ関係のセンサーが壊れてアラームが点灯したり、さまざまです。
仕事内容・勤務形態
Q:仕事の概要を教えてください。
A:大雑把には、朝または未明に出発して指定された現場にコンテナを引っ張っていって、現場で中身の貨物の積み下ろしてしてもらって、戻ってきてコンテナヤードにコンテナを搬入します。その後は、明日持っていくコンテナをコンテナヤードから搬出して自社のシャーシプールに積み置きします。そういう仕事の繰り返しです。
Q:朝は早いですか?
A:その日によります。例えば栃木や群馬に朝7時着指定だとして、予期せぬ渋滞にも対処できるよう2時間前着で考えれば、横浜・本牧を深夜1〜2時出発ということになります。近場なら7時始業もありますし、逆に関西方面に前日から出発する人もいます。あと、遠出なしで朝は遅めの勤務形態の人もいますから、その辺は会社と相談してみてください。
Q:昼休みはありますか?
A:決まった昼休みはありません。しかし、現場やヤードには昼休みがあったりするので、たまたまその時間帯に居合わせれば昼休みになります。走行中であれば、「430休憩」といって4時間運転したら30分休憩するというルールがあります。
Q:終業は何時ですか?
A:終業が何時とは決まってません。コンテナヤードの入場ゲートが閉まるのが16:30というのが目安です。日によって自社がこなすべき分を消化してしまえば15時頃終業だったり、なんだかんだで19時頃までかかったり、遠方から夜に帰社することもあります。
Q:週休2日制ですか?
A:いいえ。業界としては土曜も営業しています。横浜・本牧のコンテナヤードは入場ゲート閉門が11:30または15時で、月〜金より早く閉まります。運転手の側としては、「土曜は出社しない」と宣言して個人的に週休2日にしてる人もいます。会社として週休2日制のところもありそうです。
Q:貨物の積み下ろし作業はしますか?
A:いいえ。国内便のトラックなどとは違って、海上コンテナは輸出入貨物を積んでますから、海コンの運転手は中の貨物に触れることはありません。トレーラーを運転してコンテナという箱を動かすのが仕事です。
Q:力仕事はありますか?
A:海コン運転手は貨物の手積み手降ろし作業などはありませんから、それほどの力仕事はありません。今までで一番大変だと思ったのは、タイヤチェーンですね。脱着どころか、箱から出したり仕舞ったりするだけで重労働です。
Q:トイレはどうしてますか?
A:現場やコンテナヤードにはトイレがあります。遠出する場合の途中でしたら、今は道の駅や大型対応コンビニがあるので助かってます。横浜・本牧拠点の場合、北に行っても西に行っても2時間くらい走ればそういう施設がありますので、体調不良でなければ大丈夫です。体調不良でなければ。
Q:今の仕事に就いて何が大変でしたか?
A:睡眠不足です。そうなる理由があって、慣れないトレーラーの運転で疲労困憊なのと、毎日のように初めての現場に行くので前日の夜に下調べして職場の先輩に電話して教えていただいて…それで余計に睡眠時間が削られてしまいます。1年以上やってるとだんだん慣れてきます。
それから、コンテナヤード内での立ち回り方が特殊なので慣れるまで大変です。それで作ったのが下記のガイドブックです。全国の港湾コンテナヤードでこういう資料があるといいですね。
横浜C.Y.ガイド
https://kaicon.jp/yokohama_cy_guide/
Q:ヘッドは自分専用ですか?
A:乗車勤務時間が長いので基本的にはそうです。皆さん、自分が仕事しやすいように車内小物や追加バックミラー等を装着したり、寝袋を持ち込んだりしています。海コン以外も運ぶ人は必要に応じて車両を乗り換えます。
Q:ヘッドで仮眠したりするのですか?
A:します。長時間勤務になりやすい仕事なので、現場に余裕を持って早めに到着した際に現場近くで待機中に仮眠したり、現場で貨物の積み下ろし作業中に仮眠したりします。
Q:一日にコンテナを何個運びますか?
A:その日によります。午前中に栃木や静岡あたりに行って、作業終わって戻ってきて空コンテナ返却して、その日はそれだけで終わることもあります。近場でちょこちょこやる日は7〜8本動かすこともあるでしょう。
Q:一日にどれくらい走りますか?
A:人によって会社によって違うと思いますが、私の場合だと150〜450kmくらいのことが多いです。近場でちょこちょこやってる日には100km行かないこともありますね。
Q:何を運んでるのですか?
A:コンテナの中身は様々です。冷凍食品、青果、魚介類、アパレル製品、文房具、日用雑貨、家電、ホームセンター商品、化学製品、工作機械、自動車部品、ソーラーシステム、米軍物資、廃油、金属スクラップ、国際レース用のレースカーと機材、その他。
Q:高速道路は使いますか?
A:最近は2024年問題への対応のためか、往復または片道高速指定の運送案件が増えてきました。それ以外だと運送会社の社内方針として首都高のみ利用可能だったり、高速利用は運転手の自腹という会社もあると聞いています。
職場環境・待遇・生活
Q:女性ドライバーはいますか?
A:います。統計データは把握してませんが、コンテナヤードなどで見かける印象としては、海コンドライバーの女性比率は1%くらいかなと思います。
Q:外国人ドライバーはいますか?
A:います。統計データは把握してませんが、最近は増えてきた印象があります。外国人主体の会社、あるいは積極採用してる会社がありそうです。
Q:給料はどれくらいですか?
A:会社によります。断定的には言えませんので、求人サイトなどを参照してください。給与額の決め方も会社によっては固定給だったり、成果報酬的だったり、さまざまありそうです。
Q:健康診断はありますか?
A:あります。毎年、提携する診療所で一般的な健康診断をします。
Q:上司や同僚とはどういった関わり方ですか?
A:一般的にはデスクワークだと上司や同僚と四六時中一緒なのが当たり前だと思いますが、海コン運転手の場合は基本的には運転中は一人です。無線で逐次報告したり指示を受けたりするので、上司や同僚とは声だけでの関わり方が多いです。ただし、現場で協力し合ったり、車庫や事務所で挨拶したり雑談したりなどはあります。
Q:未経験からでも生活できますか?
A:試用期間中は給料が安いと思いますが、そこは会社に給与額と期間を確認してください。あと、入社前に新規で大型一種+牽引免許を取得するのであれば、その期間と費用も考慮してください。
Q:未経験から免許取得費用を会社負担してくれますか?
A:路線バスなどだとそういった広告を出してる会社もありますが、海コンで免許取得費用(大型一種+牽引)を負担してくれる会社は今のところ知りません。
Q:家族と過ごす時間は取れますか?
A:大型トラックだと全国を走り回ってて帰宅するのは月に数度などという話も聞きますが、海コンの場合は基本的には日勤、つまり毎日出社して帰宅できると思います。ただし、出社時間は日によって深夜の1時だったりすることもあります。中には、通勤距離(=通勤時間)の関係で翌日の現場によってはヘッドに車中泊して帰宅しない人もいます。
Q:会社選びで気をつけることは?
A:もし、新規で大型一種+牽引免許を取得して海コン業界に入るのであれば、そういった未経験者を採用してくれる会社を見つけることが重要です。中には未経験者お断りの会社もあります。一旦、海コン業界に入ってしまえば、あの会社はどうだこうだといろいろ噂も聞こえてきます。(笑)
あと、会社によって所在地(勤務地)が埼玉や群馬などの内陸部にあって、東京・横浜などのコンテナヤードにコンテナを搬入・搬出に行くという業務形態もあるようですから、その辺りも応募企業に確認してください。
Q:最初にどんな流れで仕事を覚えますか?
A:最初は先輩の横乗り(同乗研修)でコンテナヤードと現場での仕事の流れを見て覚え、次に自分が運転して先輩が助手席に同乗する形で業務の経験を積みます。数週間そういった期間があって、そのうち一人で仕事に放り出されます。
Q:普通車しか運転したことなくても大丈夫ですか?
A:トレーラーはとにかく車両が大きいので、慣れるまでは大変です。トラック未経験から海コントレーラーに乗ってそのまま定着した人も多いですが、体験同乗的に乗ってみて「こんな大きいのは無理」ということで断念した人もいると聞きます。車両が長いので内輪差も要注意です。下記の記事を参考にしてください。
初心者が最初に覚えるべき、海コントレーラーの左折マニュアル
https://kaicon.jp/container-truck-driving/container-truck-left-turn-manual/
Q:トラック未経験から海コントレーラー運転手になる場合に、年齢制限はありますか?
A:一般的にどうとは言えませんが、トラック未経験の中高年でも入れてくれる会社もあります。逆に、若年層がどんどん入ってくる業界でもなさそうです。
Q:事故は多いですか?
A:なんとも言えません。人身事故にならない軽微な「擦った」「ぶつけた」「壊した」はちょこちょこありそうです。(←自分の分を含む) あと、構内道路で横転して街灯をへし折った事故の話も聞きました。人身事故ですと、私がこの2年半で見聞きしたのは下記の事故と、海コントレーラーが右折の乗用車に衝突した事故現場にたまたま通りかかったことくらいです。
Q:海コン運転手になって楽しいことはなんですか?
A:一般に公道を走ってる中では最大クラスの車両を運転することと、特にトレーラーですから交差点等で特殊な曲がり方をすることですね。上述の記事(初心者が最初に覚えるべき、海コントレーラーの左折マニュアル)を見てください。あと、そこそこ遠方の現場にも行きますから、ドライブ気分で季節によって変わる景色を眺めたり、休憩時に道の駅などで食事をしたり、そういったことも楽しみのひとつです。
他にも「こんなことが聞きたい」という海コン業界未経験の方がいれば下記メールアドレス宛に質問してください。ベテランの方におかれましては、笑ってお見逃しください。(笑)
お問い合わせ先 E-mail:contact@kaicon.jp