トレーラーという乗り物は、キングピンを軸にヘッド(牽引する車両)とシャーシ(コンテナを載せる台車)が可動する構造を持っています。そのため、乗用車や一般的なトラックとは大きく異なる挙動を示します。
今回は、その中でも「バック時の特性」に注目して考えてみます。
1.直進バックでも、どんどん折れ曲がっていく
トレーラーは前進時であれば、内輪差こそ大きいものの、基本的にはシャーシがヘッドの軌跡に追従します。そのため、挙動自体は乗用車や一般のトラックと比べても、それほど違和感はありません。
ところが、バックになると話はまったく変わります。
ヘッドとシャーシが「ほぼまっすぐ」に見えていたとしても、そこにごくわずかな折れ角があるだけで、ヘッドがハンドル操作なしに直進バックしていても、シャーシの折れ角は勝手に増幅していきます。
つまり、
まっすぐバックしているつもりでも、勝手にどんどん折れていく
──これがトレーラー特有の挙動です。
理屈は後回しにして、まずはその様子をアニメーションで見てください。
このアニメーションは、以下の条件でシミュレーションした数値をもとに作図したものです。
条件:
- 海コン40ftトレーラー
- シャーシのキングピンから後輪中心まで:8.15m
- 初期折れ角:3度
- 道路幅:6m
- ヘッドはハンドル操作なしで直進バック
- (タイヤのスリップアングルは考慮せず)
初期折れ角3度というのは、目視で「わずかに折れている」とわかる程度です。
また道路幅6mは、海コントレーラーと乗用車がすれ違うのもやっと、という現場感のある道幅です。
この条件で見ると、アニメーションからわかるように、ヘッドは道路に沿ってまっすぐバックしているにもかかわらず、シャーシの折れ角は増え続け、約25m付近で道路から外れ、30〜35m付近で直角に折れてしまいます。
これが、乗用車や一般のトラックとは決定的に異なる、トレーラーならではの特性です。
2.まっすぐバックするには?
上述の通り、ヘッドだけをまっすぐバックさせていても、シャーシは勝手に折れていってしまいます。
したがって、車体全体をまっすぐバックさせるためには、シャーシの折れ角が常にゼロに戻るように、意識的に補正し続ける必要があります。
初心者にとっては、これ自体がすでに難関ですが、業務として1年ほど経験を積めば、次第に感覚として身についてくるでしょう。
3.「勝手に折れていく」特性を、技として使えるか?
結論から言えば、使えます。
上記アニメーションのように、狭い道路からバックで現場に進入しなければならない場合、この「勝手に折れていく」特性は、むしろ武器になります。
数値を参考にすれば、シャーシ後端と現場入口の間に40ft海コントレーラーがもう1台入る程度の距離を確保してからバックを開始すれば、理屈の上では進入できそうだ、ということが見えてきます。
アニメーションでは特性を明確に示すためヘッドはハンドル操作なしとしていますが、当然ながら実際の現場では、「折るのが早すぎた」「まだ折りが足りない」といった状況を見ながら、補正操作を加えていくことになります。
◇
直進バックで勝手に折れていく。それはトレーラーの特性です。
この特性を知らないまま操作しようとすると戸惑いますが、挙動を理解していくと、「なぜそう動くのか」が少しずつ見えてきます。
距離の取り方や折れ始めのタイミングも、理解と経験を重ねることで、次第に意図した動きに近づいていきます。
トレーラーは難しい乗り物ですが、挙動を知ることは、そのまま現場で使える技につながっていきます──
今回はその入口として、直進バック時の特性を整理してみました。