プレスリリース
2026年9月12日
Kaicon.jp
待機列は消えるが負担は消えない。繁忙期は運送会社にシャーシ増車15%、最繁忙期は5日で約2,000本のコンテナが行き場を失う
海上コンテナ業界の公益サイト Kaicon.jp(運営:株式会社ポートパートナー)は、コンテナヤード(CY)への入場をすべて予約制とする「完全予約制」が、海上コンテナ運送会社にどのような負担をもたらすかを数値シミュレーションで検討した報告書「ヤード完全予約制で、待機列はどこへ行くのか ―― 見えなくなった負担を数値シミュレーションで追う」を公開しました。
コンテナヤードの入場予約制は、ゲート前の長い待機列とドライバーの長時間拘束を解消する対策として、各CYにて徐々に導入が進んでいます。では、すべてのトレーラーが予約してから入場するようになったとき、あの待機列は本当に消えるのでしょうか。それとも、見えない場所へ移るだけなのでしょうか。本報告書は、横浜市港湾局が公表する横浜港の外貿コンテナ統計に合わせた規模の仮想ヤード『本牧総合ヤード』と、その全てのコンテナ陸送を引き受ける仮想運送会社『本牧全部運送』を置き、同じ帰着データで「予約なし制」と「完全予約制」を突き合わせることで、待機列が消えたあとに負担がどこへ、どれだけ移るかを試算しました。対象は返却と搬入で、搬出は扱っていません。
主な論点
- 完全予約制にすると、ヤード前の待機列は消えます。しかし、その日に帰着するコンテナの本数も、午後イチに集中する帰着の山も変わりません。予約なし制なら、16:30までに列に並べば夜までかかっても当日中に処理されます。完全予約制で最終予約枠を16:30に置くと、予約枠が取れなかったコンテナは翌日繰越となり、シャーシに載ったまま一晩、運送会社のシャーシプールを占有します。
- 例年負荷の高い11月では、特に負荷が高くなる日(上位1%・p99)で、完全予約制がなければ生じなかった翌日繰越が812本、その日の返却・搬入負荷の約15%に達します。その分だけ運送会社はシャーシ増車を迫られます。待機列という「時間」の負担が、シャーシと置き場という「モノ」の負担に形を変えて、運送会社側へ移ります。
- 過去4年で最も負荷が高かった2025年11月の水準では、翌日でも搬入できないコンテナが月曜から金曜の5日間で約2,028本積み上がります。搬入にはカット日、空コンテナの返却には返却期限という締切があり、返却期限を過ぎれば延滞料が日ごとに積み上がるため、増車で置き場を足せば済む話ではありません。
- 原因は最終予約枠を16:30に据え置くことにあります。最終予約枠を17:00–17:15まで延ばせば積み上がりは止まり、18:15–18:30まで延ばせば完全予約制で必要なシャーシは予約なし制と並びます。夕方の予約枠をヤードが持つか、シャーシと置き場を運送会社が持つか――負担の分担の問題として示しています。
報告書の主張 ―― 負担は「時間」から「モノ」へ、繁忙期には「金と信用」へ
完全予約制は、待機の負担を消す制度ではなく、負担の置き場所と形を決める制度です。最終予約枠の時刻が、夕方の負担をヤードと運送会社のどちらが持つかを決めます。予約枠あたりの予約数が、運送会社に落ちた負担が待機列(ドライバーの時間)として現れるか、翌日繰越(シャーシと置き場)として現れるかを決めます。負担の形は、時間からモノへ、最繁忙期には延滞料という金と、予約枠が取れずに輸出コンテナを船に積めない欠便という信用毀損へと変わります。
実際に完全予約制へ移行したあるCYでは、予約枠を処理能力より多めに出す運用が見られます。枠が取りやすくなる代わりに、予約したのにゲート前で待つ場面が戻ってきます。負担が「モノ」から「時間」へ引き戻される動きで、報告書ではこれも同じ分担の問題の一部として触れています。
本報告書は完全予約制に反対するものではありません。ヤード側と運送会社側の双方が持続できる制度とするために、運送会社側へ移る負担を数値で見えるようにし、制度設計と移行準備の材料を提供することを目的としています。
報告書の読み方
報告書は本文8章と付録で構成しています。先頭1ページのエグゼクティブサマリーに主要な数字をまとめてあるので、まずそこをご覧ください。本文は業界の実務者が一読で追える書き方を心がけ、前提と数値の細目は巻末の付録に置いています。帰着時刻の分布は観測データではなく実務経験に基づく形であること、扱っていない事項が何かは、本文8章に明記しています。
完全予約制への移行に備える運送会社の方、予約枠の設計を考えるヤード側の方、いずれにも目安として使っていただければ幸いです。ご意見や現場の実感のフィードバックをお待ちしています。
報告書
- 表題:ヤード完全予約制で、待機列はどこへ行くのか ―― 見えなくなった負担を数値シミュレーションで追う(v6)
- 体裁:PDF 27ページ(エグゼクティブサマリー1ページ+本文8章・付録)
- ▶ 報告書PDF(27ページ・約1.4MB):https://kaicon.jp/download/yard-reservation-report/
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